






ぼくのコートは父の『辰野式建築』に特有のデザインをしている。
「見覚えがあるデザイン」…?
ふむ、もしかするとぼくの兄弟を知っているだろうか。
首飾りやストールは「特別室」のステンドグラスを表している。
建物正面の、大きな半円アーチの部分にあるものだ。
帽子のエンブレムは、屋根の上にあるメルキュールとミネルバの神像だ。
これらは大阪の商工業の発展を願って載せられている。
コートの内側に、実はもう一枚上着を着ている。
これはエントランスや廊下のデザイン。
上着の下の装いは、またの機会にお見せしよう。
洋風に見えるぼくが、袴(はかま)を履いているのが不思議だろうか。
ぼくの中には日本の神話をモチーフにした装飾が多いから。